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現地レポート

大会最終日 男子準決勝・決勝「和をもって制した夏」 RSS

2016年8月26日 1時09分

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 「平成28年度全国中学校体育大会 第46回全国中学校バスケットボール大会」は大会最終日を迎え、福井市体育館で、男子の準決勝と決勝が行われました。3日間で6試合を戦い抜き、全国の頂点に立ったのは東京の実践学園。準決勝では愛媛の今治南から48-45で逃げ切り、決勝では愛知の岩成台を64-33の大差で下して、大会2連覇を成し遂げました。

決勝のタイムアップの瞬間、喜びを爆発させる実践学園。2連覇を目指した重圧から解き放たれた瞬間だろう

決勝のタイムアップの瞬間、喜びを爆発させる実践学園。2連覇を目指した重圧から解き放たれた瞬間だろう

 決勝戦のポイントとなったのは、中学生離れした岩成台のエース⑤横地 聖真選手を実践学園がいかに抑えるか。191cmの恵まれた体格を生かし、ディフェンスを次々に押しのけてシュートをねじ込んでいく横地選手には、これまでたくさんの強豪チームが手を焼いてきました。

 その横地選手に対し、試合前から密かに闘志を燃やしていた選手がいます。実践学園の⑦江原 信太朗選手です。

 江原選手は、横地選手と共に昨年度のJBAジュニアエリートアカデミー(ビッグマンキャンプ)に当時2年生ながら参加し、6回にわたる合宿を行なってきました(当時2年生は15人中3人のみ)。合宿ではおのずとこの2人がペアになって1対1などを行う機会が多かったのですが、そのときはほぼ毎回、横地選手が江原選手を圧倒していたそうです。

 だからこそ、「リベンジだと思って、絶対に止めようと思っていました」と江原選手。寡黙で感情をあまり表に出さない江原選手ですが、その胸には雪辱を誓う強い決意があったのです。

 その闘志は、第1ピリオドから全開でした。特にそれが表れていたのがディフェンスで、長い手を伸ばして最後の最後までシュートチェックに行き、渾身のジャンプでリバウンドをもぎ取っていきました。また、オフェンスでは横地選手がジャンプシュートを決めれば、すかさず江原選手が決め返すシーンもありました。両者一歩も譲らず、見応えのあるハイレベルな戦いが繰り広げられたのです。

 ただし、そんな江原選手の奮闘だけでは、実践学園がこんなにも大きくリードを広げることはなかったでしょう。実践学園が自分たちの流れを引き寄せたもの、それは全員が協力し合うことで生まれた“チーム力”でした。そのことは決勝戦の途中、森 圭司コーチが選手たちにかけた、こんな一言にも表れています。

「相手(横地選手)はすごい選手なんだぞ! みんなで助け合え!」

 その言葉どおり、実践学園は攻防にわたって“助け合い”が光りました。ディフェンスでは、たとえマッチアップする江原選手が抜かれても、すかさず⑧渡部 一輝選手がカバーに入り、体のぶつかり合いを厭わずに横地選手を苦しめます。

積極性を見せ、30得点を挙げた実践学園⑧渡部 一輝選手。力強いプレイでチームを勢いづけた

積極性を見せ、30得点を挙げた実践学園⑧渡部 一輝選手。力強いプレイでチームを勢いづけた

 またオフェンスでも、江原選手が外角に出て横地選手を外におびき寄せながら、その間に渡部選手らが果敢にリングにアタックしました。渡部選手は、この試合で30得点と爆発。江原選手も「自分が無理に攻めなくても周りの選手が点を取ってくれたので、感謝しています」と試合を振り返ります。頼もしいチームメイトの活躍が、エースの負担を減らしていたことは間違いありません。

 こうして、個の力ではかなわないかもしれない強敵に、チームが一枚岩となって対抗した実践学園。チームスローガンに“和”を掲げ、日頃からチームプレイを磨いてきたからこそ、その成果が決勝の大舞台で表れました。

 一方、予選リーグから続いた岩成台の快進撃もここまでとなりました。思うようなプレイができずに、試合途中からすでに涙を浮かべていた横地選手。タイムアップと同時に頭にユニフォームをかぶり、うつむいた姿からは、言いようのない悔しさがにじみ出ていました。

 それでも、優勝候補に挙げられた強豪チームを次々と撃破し、決勝まで上り詰めた岩成台の大躍進は見事でした。その原動力として横地選手が挙げてくれたのもまた、“チーム力”の大切さです。

試合後、岩成台⑤横地 聖真選手に駆け寄る実践学園⑦江原 信太朗選手(写真左)。良きライバルは、良き友でもある

試合後、岩成台⑤横地 聖真選手に駆け寄る実践学園⑦江原 信太朗選手(写真左)。良きライバルは、良き友でもある

「僕のアイソレーションばかりで、見ている人はワンマンチームだと言うかもしれません。でも、周りのチームメイトが僕のことを分かってくれて、生かしてくれたからこそ、いまのスタイルがあります。試合中、僕はたまに周りの選手に檄を飛ばすこともありますが、何でも言い合える仲間だからこそ、厳しいことも言えました。この仲間だからこそ、ここまで来ることができたと思います」。横地選手は胸を張って、誇らしげにチームメイトのことを語ってくれました。

 誰か一人の力で勝てるほど、バスケットボールの世界は甘くはありません。全国の上位に進出するようなチームは例外なく、チームの“和”がエースと呼ばれる選手たちを支えていました。

 3年生たちは公式戦としては今大会で引退となり、来年から高校のステージへとステップアップします。個の力を伸ばしていくだけでなく、新たな和を作ってチーム力を磨き、再び全国の舞台に戻ってきてくれることを願っています。

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大会最終日 女子準決勝・決勝「壁を越える」 RSS

2016年8月26日 0時57分

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 福井県を舞台に行われた「平成28年度全国中学校体育大会 第46回全国中学校バスケットボール大会」。最終日の本日は準決勝と決勝が行われ、女子は春日部市立豊野(埼玉県)が初優勝に輝きました。

 決勝カードは、キャプテンの⑱中澤 梨南選手(177cm)、⑰倉持 のりか選手(173cm)のツインタワーを擁する春日部市立豊野と、準決勝で福岡県・北九州市立二島を53-48で下した京都府・京都精華学園との顔合わせ。
 序盤に⑱中澤選手、⑰倉持選手のインサイドプレイでリードを奪った豊野は、その後に⑩山下 芽選手の活躍もあり、主導権を握ります。対する京都精華学園も、キャプテン④高橋 未来選手、⑧祢宜 くるみ選手らのジャンプシュートで対抗しましたが、後半の出だしに豊野に連続得点を許すと、そのビハインドを追いつくことができず。逆にこれで勢いに乗った豊野が75-55で勝利しました。

 試合後、「これまで8回全中に出ていますが、ベスト8は2回、ベスト4は1回あります。でもその先が進めなかった。全国の厳しさは身に染みてわかっていました。(今回の決勝進出については)選手たちに素晴らしいところに連れてきてもらったなと感じています」と語ったのは、決勝で敗れはしたものの、準優勝となった京都精華学園の山本 綱義コーチ。チームは今大会で初の決勝進出、そして準優勝と、これまで越えられそうで越えられなかった“ベスト4”の壁を越えました。

京都精華学園④高橋 未来選手は強いリーダーシップを発揮し、チームを引っ張った

京都精華学園④高橋 未来選手は強いリーダーシップを発揮し、チームを引っ張った

 その新たな伝統を作った今年のチームを、山本コーチは、「キャプテンの高橋(未来選手)が高い意識を持って引っ張ってくれました。あの子が先頭になり、周りが必死についていったことで、力がついていったと思います」と、言います。
 そのキャプテンの④高橋選手はと言うと、チームをまとめることについて、「大変だったことはありません。私が何かを言っても、みんなついてきてくれました」と、言い切ります。
 決勝後、開会式を待つ京都精華学園の選手たちの輪からは大きな笑い声が何度も響いていました。そんなチームの雰囲気も準優勝の原動力となっていたのかもしれません。

 そして同じく、“壁を越えた”という点では初の頂点に立った豊野も同じです。今大会は3度目の出場でしたが、過去の成績はベスト4が1回とベスト8が1回。これでも十分に立派な成績なのですが、今年がそれまでと違うのは、優勝候補と目されての戦いだったことです。

来年は「連覇を目指します」と豊野の2年生⑰倉持 のりか選手

来年は「連覇を目指します」と豊野の2年生⑰倉持 のりか選手

 なぜなら、今年の3月末に行われたジュニアオールスターで優勝した埼玉県代表メンバーの中澤選手、倉持選手をはじめ、数名の選手が主力として属していたからです。それだけに選手やコーチ陣は、プレッシャーを感じながらの戦いだったことでしょう。
 しかし、「そのプレッシャーをプラスに変えようと思い、選手にも“それだけ期待されているのだから、頑張ろう”と言っていました」と、田中 英夫コーチは言います。さらに、「今日は選手たちも緊張している様子がありませんでした。いつも通りに試合に入れたことが大きかったですね」と準決勝、決勝を振り返りました。

 その豊野には、もう一つ、負けられない理由がありました。それは、全国大会出場を逃した昨年の苦い思い出です。
 今年同様に、全国での活躍を期待されていた昨年は、激戦の埼玉県を制し、関東大会に乗り込みましたが、2回戦で敗退。全国大会への切符を掴むことはできませんでした。その悔しい思いを抱えての今年は、雪辱を果たす年でした。

 そんな今年のチーム作りに関し、田中コーチは「ディフェンス」を強化ポイントに挙げました。⑱中澤選手や⑰倉持選手などオフェンシブな選手がいるからこそ、ディフェンスを頑張ろうと。その考えは選手にも伝わっており、⑰倉持選手も「今年はディフェンスを頑張りました」と言います。
 決勝でも失点は55点。大会を通しても決勝戦以外はすべて50点以下に失点を抑えていることからも一つ成果は出ていたと言っていいでしょう。

 “昨年のリベンジ”そして“優勝候補のプレッシャー”
 様々な壁を乗り越えてきた豊野。その先に待っていたのは“日本一”という歓喜の瞬間でした。

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大会3日目 男子決勝トーナメント1・2回戦「ライバルの背中」 RSS

2016年8月25日 1時00分

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岩成台⑤横地 聖真選手(中央)は石山を下して嬉し泣き。勝利への執念が見えた

岩成台⑤横地 聖真選手(中央)は石山を下して嬉し泣き。勝利への執念が見えた

 大会3日目を迎えた「平成28年度全国中学校体育大会 第46回全国中学校バスケットボール大会」。この日は男子決勝トーナメントの1・2回戦が行われ、ベスト4が出そろいました。勝ち上がったのは、愛知の岩成台、福岡の西福岡、愛媛の今治南、東京の実践学園の4チーム。大会最終日となる明日、いよいよ準決勝と決勝が行われ、この中からチャンピオンが決まります。

 決勝トーナメント1・2回戦の中でも、特に強豪ひしめく激戦ブロックとされたのが左上の山。結果的には、岩成台が1回戦で新潟の石山を54-51、2回戦で東京の梅丘を66-62で下す快進撃を見せ、ベスト4進出を決めました。

 点差からも分かるように、両試合ともチームとして大きな力の差はありませんでした。もしもう一度試合をすれば、勝負は違っていたかもしれません。しかし、1発勝負のトーナメントに“たられば”は存在しないもの。この大一番で試合の主導権を握ったのは、絶対的エースの⑤横地 聖真選手を中心に、ロースコアのスローゲームに持ち込んだ岩成台でした。

 その岩成台に敗れた石山は、ジュニアオールスター優勝メンバーを多く擁し、今大会も優勝候補の一角に挙げられていた注目チーム。全員が日本一だけを見据えてきたからこそ、試合終了のシーンは悔しさを超えた“悲壮感”にあふれていました。実はこの試合、一度タイムアップのブザーが鳴った後、残り0秒で横地選手にフリースローが与えられたのですが、石山の選手たちはコートにしゃがみ込んで泣き崩れてしまい、そのフリースローを見ようとはしませんでした。

アグレッシブに攻めた石山⑦齋藤 友紀選手だったが、勝利を引き寄せることはできず

アグレッシブに攻めた石山⑦齋藤 友紀選手だったが、勝利を引き寄せることはできず

 試合後、石山の小林 透コーチはこう言います。「今年は力のあるチームだからこそ、今日のような追う展開を経験したことがありませんでした。また、横地君のような選手と対戦するのも初めてで、守り切ることができなかった。負けたのは私の責任です。本当に、選手たちを日本一にさせてあげたかった……」。その目には選手たちと同様に、悔し涙が浮かんでいました。

 厳しいマークを物ともせず、岩成台の得点の大半を稼いだ横地選手は、予選リーグの試合と比べても格段に集中し、“覚醒”していました。相手が、ジュニアオールスターの際に3点差で敗れた新潟だったこともあったでしょう。試合の入りから終了まで横地選手の集中は切れず、ビッグプレイを連発。見事にアップセットの立て役者となりました。

 岩成台の勢いは、2回戦の梅丘戦でも止まりません。梅丘はその横地選手に対して、マッチアップをさまざま変える作戦に出ます。それでも、横地選手はフィジカルの強さを生かしてディフェンスを押しのけ、確実に得点を重ねていきました。

189cmある梅丘の⑤結城 智史選手(写真右)&⑦木林 優選手と、191cmの岩成台⑤横地 聖真選手との空中戦は見応えがあった

189cmある梅丘の⑤結城 智史選手(写真右)&⑦木林 優選手と、191cmの岩成台⑤横地 聖真選手との空中戦は見応えがあった

 また、ディフェンスでも、横地選手が梅丘の⑤結城 智史選手を徹底マーク。梅丘の染谷 久コーチは、「前半のオフェンスが機能しなかったことが敗因」と言います。「最初に結城が抑えられたことで、周りの選手が戸惑ってしまいました。途中からアジャストしていったけれど、時間が足りませんでした」。自他ともに認める梅丘のエースである結城選手が抑えられてしまったことが、チームメイトの動揺につながったのです。

 「自分の力の無さを感じさせられました。ドリブルなどのスキルも、フィジカルの強さも、まだまだ相手に負けていました」。試合後、絞り出すようにこう口にした結城選手。泣くまいとしながら、その声は震えていました。

 チームとして力の差はありませんでしたが、結城選手はエースとして、個の力の差を痛感させられていました。それはこの1年間チームを引っ張ってきた彼にとって、エースのプライドを傷つけられる屈辱だったかもしれません。それでも、「高校ではもっとフィジカルを強くして、ドリブルや外のシュートももっと磨きたいです」と、その目を未来に向けていました。

 悔しさを噛み締める石山や梅丘の選手たちを見ながら、今の大学1年生たちを思い出しました。あの学年は、同い年に“八村 塁”(宮城・明成高卒)という絶対的なスターが存在し、多くの選手たちが『打倒・八村 塁』を掲げて高校3年間でレベルアップしていった代です。安直に横地選手を八村塁選手に例えるわけではありませんが、きっと敗れた選手たちは、同世代のライバルの背中を追い掛け、これからさらに自分の力を磨いていくことでしょう。

 敗北はつらいもの。しかしこの悔しさをやる気の火種とし、自らの成長につなげられた選手こそ、高校やその先のカテゴリーで輝くことができるはずです。ライバルの背中から目を背けず、全力で追い掛けた先に、きっと自分でも思ってもみなかった景色が、広がっているのではないでしょうか。

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